百田尚樹の小説。実話ドキュメンタリーで、主人公周辺の名前だけ変えてある感
じ。
出光興産の創業者の伝記でもある。
一つの信念のもと、時代に翻弄されながら壮大な戦いを繰り広げる。
確かにすごい話。
スタートアップはこういやる気に満ちた企業が多いが、大きくなってこの体質だ
と現代ならブラック企業確定だ。よほどのカリスマ性があって、なお成長を伴っ
て、そもそも理念がまっとうで時代に合っていたから成り立つというのはある。
勝てば官軍側から書いたのでそういう評価にできるところはあろう。
国岡商店の正義を大義として見ているが、政府にも、GHQにも、7シスターズにも、
イランにも英国にも大義はある。どれが正しいかは、断定のしようもない。
右翼と愛国者は似て非なるものとも思った。愛国者で左派も十分成り立つ。
そもそも「国」ってなんなんだろう。イデオロギーなのか。人なのか、土地なの
か。
いずれにせよ英国は歴史的にずるいわな。後進からあらゆる手で搾取を続けてい
る。
つくづく人種差別的な考えが根底にあることを感じる。
顧みて現代。
今目の前にある中国との緊張や東南アジア、アフリカに関する諸問題。
何も変わっていない。先進国がいかに搾取するかということに対する途上国の抵
抗という構図はどうしても拭いきれない。例えば寄って集って搾取する先進諸国
とその傀儡に対し反旗を翻した中国、という構図を否定できるだろうか。
いろいろ考えさせられ、感動的な部分もあるが気持ち悪さも残る話。
唯一普遍的に得られたのは、「ブレないってのはカッコいいな」ってことかなあ。
「ブレないことが大事」と言ってしまうと、それはそれで間違いの元だとわしは
思うのだ。格好悪くても、フレキシブルに、都度良い道と思う道に方向修正した
い。どこか信念を持っているのは大事。どこに拘ればよいのだろう。なにが自分
にとっての大義か、ってところなのかな。
同じことを皆がやったら破綻する行動は「卑怯」。を一つの基準にしようとは思っ
てる。
でもそれでは説明しきれない部分あるし。なかなかすっきりしないんだよ
な。
散々脱線したが、戦前戦後の石油産業の構図を知ることを含め、良い本だと思っ
た。
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